書評『伝説の経営者100人の世界』
twitterでも取り上げた本ですが、改めて取り上げます。
田原総一朗 『伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』(白秋社、2020年)
読む前は、「1冊で100人とは大きくでたな」と少し懐疑的な印象をもっていました(実際、一人あたり1,000字少々。)しかし、読後は、「いいもの読ませていただいた」というもの。田原氏の力量でそれぞれの社長のエッセンスが高濃縮で詰まっています。
一人取り上げるとすると、松下幸之助。1989年に亡くなっているため、生前の松下氏のことを私はほとんど知らないのですが、その名前はもはや伝説。
「『運』 というのは、難しいことにぶつかったとき、悲観してあきらめるか、面白がって前向きに取り組めるか、そこなんです」
(松下幸之助)
断片なので詳しいことは分かりませんが、これだけ読むと、松下氏のいう「運」はいわゆる運というものとは異なります。一般には、そもそも困難にぶつからないことが「運がいい」ということですから。
困難にぶつかったときに面白いと感じる。ここでは一種の発想の逆転が起こっています。
「運がいい=環境(外面)」/「面白い=感情(内面)」
松下氏は、外面と内面を結びつけているようです。運がいいことは内面的なものに由来する、と。実際の意図は思い及びませんが、松下氏の発想に感銘を受けた次第。
さて、あとがきにもこのさいのやり取りが取り上げられています。田原氏が松下氏に、社員を関連会社の社長に選ぶとき、社員のどこを重視するのかと聞いたさいのやり取りです。以下、松下氏の言葉。
「頭の良さなど関係ない。僕は中学の受験に失敗している」
「それ(身体が丈夫なこと)も関係ない。僕は二〇歳のときに結核になり、半病人として経営している」
「それ(誠実さ)も関係ない。経営者が社員とまともに向かい合っていれば、社員たちは誠実になる。社員が誠実になるか不誠実になるかは、経営者次第です」
(社員のどこを重視するかというと)「大変な難問にぶつかったとき、悲観的にならず面白がって、どこまでも前向きにチャレンジできる人間かどうかです」
本書では、松下氏のみならず、たくさんの社長が取り上げられています。私も新米ですが、一事務所を立ち上げた身。少しでも彼らに追いつけるように精進してゆきます。