「中小企業投資促進税制」は1年間の繰越しが可能
税理士に対する訴訟には色々あります。例えば、消費税では、課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書などの出し忘れ、あるいは個別対応方式と一括比例配分方式の不利なほうで計算していた場合などの訴訟が有名です。
さて、最近、法人税に関してハッとしたものがありました。それは税額控除には繰越しができるものがあるということです。つまり、申告事業年度は赤字で一見効果がないようにみえても、翌事業年度に黒字になったら税額控除の効果がでるというものの存在です。
その一例が「中小企業投資促進税制」です。中小企業投資促進税制では、一定の機械装置等の設備を取得・製作等した場合に特別償却又は税額控除を選択適用できます。
そして、税額控除では、控除限度額は申告事業年度の法人税額の20%です。つまり、赤字の場合、法人税額はゼロなので、申告事業年度では法人税額の20%もゼロになります。結果、税理士は税額控除の書類を忘れるということにつながるわけです。しかし、実際には次の規定があります。
税額控除限度超過額の繰越し
国税庁HPより
税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超えるために、その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった金額(以下「繰越税額控除限度超過額」といいます。)について1年間の繰越しが認められます。
この1年間の繰越し規定を失念して申告し、「なぜやってくれなかったのだ」と税理士が訴えられるわけです。税理士としては背筋の凍る話です。もちろん、間違いはないに越したことはありませんが、念のため、自社の過年度申告書を確認してみてはいかがでしょうか。