法人において受取配当金を受け取った場合の税率を概算する
目次
1.問題意識
株式の配当を受け取る場合、個人と法人では課税の仕組みが異なります。例えば、個人の場合、株式配当は申告分離課税では次のような税率が課されます:
- 所得税:15.315%(復興特別所得税を含む)
- 住民税:5%
- 合計:20.315%
これに対して、法人が株式配当を受け取った場合、課税はどのように異なるのでしょうか? 法人税における「受取配当金の益金不算入」という仕組みが適用される点がポイントとなります。この制度にしたがって、法人が配当に対して実際に支払う税率が決まります。
以下に、法人が配当を受け取った場合の実効税率についての具体的な例を示します。
2.配当にかかる税率の概算
法人税における受取配当金の益金不算入制度を考慮した場合の税率を以下の表にまとめると次のようになります。 ※表では法人税の実効税率を30%として概算しています。
株式等保有区分 | 保有割合 | 益金不算入割合 | 配当にかかる税率 |
---|---|---|---|
完全子法人株式等 | 100% | 100% | 0% |
関連法人株式等 | 1/3超 | 100%(負債利子控除後) | 0%(負債利子控除後) |
その他の株式等 | 5%超1/3以下 | 50% | 約15% |
非支配目的株式等 | 5%以下 | 20% | 約24% |
法人が受け取る配当金についての課税制度は、個人の課税制度に比べて複雑ですが、その背景には法人間の配当について、二重課税を避けるという明確な目的があります。
なぜ二重課税を避ける必要があるのか?
配当金は、株式を発行する法人で法人税を課された後に株主へ分配されるお金です。そのため、株主側で再度課税されると、同じ所得に対して二重に税金が課されることになります。
法人税法では、これを回避するため、「益金不算入制度」を設け、法人が受け取る配当金の一部または全部を課税所得から控除しています。
株式保有割合による違い
表を見るとわかるように、保有割合が多くなるほど、受取配当金に対する課税は軽減されます。完全子法人のケースでは、配当金全額が益金不算入となり、実質的に税負担はゼロとなります。これは、完全子法人との取引をグループ内の資金移動とみなし、課税を不要とする考え方に基づいているためです。一方で、株式の保有割合が低いケース(5%以下の非支配目的株式等)では、税負担が大きくなります。この理由は、投資目的の株式配当には二重課税回避の恩恵を部分的に制限し、一般的な収益として課税することを目的としているためです。