会計システムの導入時に行うこと(重要)
会計システムを導入しただけでは、会計は動き出しません。会計帳簿を始める前に知っておくこと、やっておくことがいくつかあります。この記事では、開業直後に行うべき会計関連の基本的なステップを紹介します。
前提となる発想
- 何よりも大切なことは、「書類の整理である」
改善・効率化は基礎となる資料の収集ができてこそ。システムを導入する前に、資料を漏れなく重複なく(MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)揃えることが大切です。電子帳簿保存法に従えば、完全ペーパレス化を行うことができますが、最初からペーパレス化を目指しては失敗します。まずは書類をきっちりと整理できるようになりましょう。 - 年間スケジュールを頭に入れて行動する
先が見えないと、いつ・いくら資金を用意すればよいのか分からず不安になります。ただし、年間スケジュールを立てることはそれほど難しいことではありません。毎月の源泉所得税、住民税、社会保険料、決算に係る納税、中間納税、自動車税、固定資産税、償却資産税などといった税金・社会保険料以外にも保険料、修繕費などの発生も予定に組み込むことで行動計画が立てやすくなります。
当事務所では、お客様ごとに一年間のスケジュールを作っております。 - 支払いを事業用とプライベート用を明確に分ける
月次決算をスムーズに行うためには資料をしっかり集めることが必要ですが、そのためには「事業用」の支払いと「プライベート用」の支払いを都度、分類しておかなければなりません。あとから分けるようとすると、思い出せないこともあるため、支払のタイミングで分けるようするのがコツです。 - 現金取引を最小限にする
現金は現金出納帳(小口現金では小口現金出納帳)を用意していただいておりますが、そもそも出納帳づくりを最低限にしていくという心構えも必要です。そこで、当事務所では、事業用のクレジットカードを作成し、現金取引を最小限にすることをおすすめしております。 - データドリブン思考を持つこと
DXは可能な限り目での確認や手入力を「減らそう」と意識し、同時にそのように行動していくことで達成されます。現在では、クラウド会計が浸透していますので、銀行明細やクレジットカード明細はAPI連携を行い、データを自動的に会計システムに取り込むようにします。インボイス番号の有無に関しては、定型的な取引に関しては取引先登録を行い、また非定型的な取引に関しては整理されてた書類をもとに番号の有無を確認していきます。
具体的な行動
- メインバンクをインターネットから利用できるようにする
事業には売上入金や仕入れ支払などが必ず発生します。そのさい、インターネットバンキングがなければ、確認や支払いがどうしても後手に回ります。可能であればすべての銀行でネットバンクにすることが望ましいですが、最低限メインバンクはインターネットから操作できるようにしましょう。
大部分の銀行取引を事務所から行うことができるようになり、また銀行明細は会計システムと連携することができるため、通帳をみることなく取引内容が会計システムに取り込まれます。 - 事業用クレジットカード、ETC、交通系ICカードを作成する
法人の方は法人カード、個人事業主の方は特定のクレジットカードを作成し、クレジットカードで支払える経費はそのクレジットカードから行うようにしましょう。そうすることで、クレジットカード明細を会計システムに取り込むことができ経理の効率化がはかれます。
※ときどき質問されることですが、クレジットカードを使ったからといって書類整理がなくなるわけではありません。クレジットカードで支払ったときに、お店からもらうレシートや領収書は必ず保険するようにしてください。 - 現金支払い、クレジット支払い、銀行支払いを毎月行う(書類整理)
毎月、面談を行いますので、面談前に書類整理をお願いしております。経理業の効率化は、システムを導入しただけで完了するものではなく、業務プロセスと一体です。そのために、現金取引を減らせばいいだけではなく、書類の管理方法にも変更が求められます。 - 売上管理のルールを明確にする
損益計算(例えば、営業利益)は、「売上」から「仕入」と「経費」を引くことで計算されます。もちろん、売上、仕入、経費のそれぞれを完全に管理していくことが目標ですが、まずは売上をしっかりと管理できるようになりましょう。そのためには、事業のお金の流れを把握し、どのように管理していけばよいかを一緒に考えます。
現金売上がある場合は、売上の現金を仕入や経費の支払いに使いたい気持ちは分かりますが、売上は全額を銀行口座に入金し、その後改めて引き出すなどのようにルール化して、売上がもれないようにしましょう。また、現金の売上がない場合は、販売管理システム(会計システムに付属のものを含む)を利用し、売上を請求書から管理できるようにしていきます。 - e-tax、eLtaxにログインできるようにする
国税、地方税はそれぞれe-tax、eLtaxにログインすることでインターネットバンキングで納付することができます(その他、クレジットカードやダイレクト納税・共通納税で納付が可能)。2024年5月以降、(一部の)納付書は事前送付がされなくなるため、納税する窓口はネットだと考えるようにしてください。 - 社会保険料の支払いは口座振替にする
毎月、月末に支払いがありますが、忘れないように口座振替をおすすめしております。 - GビズIDを取得する
GビズIDを利用すると、複数の行政サービスをインターネット上から利用できるサービスです。すべての行政サービスで利用できるわけではありませんが、利用範囲が徐々に増えてきています。法人、個人事業主にかかわらず、開業時に取得しておくものだと考えております。(参考)GビズIDのページ