ゴルフ会員権贈与事件=シンプル判例まとめ=
最判平成17年2月1日
目次
事実の概要
Xは、平成5年7月、父Aから訴外B社が経営するゴルフクラブの会員権(本件会員権)の贈与を受けた。その際、XはB社に対し名義書換手数料82万4,000円(本件手数料)を支払った。父Aは昭和63年に1,200万円で当該会員権を取得していた。その後、平成9年4月にXは本件会員権を第三者に100万円で譲渡した。Xは平成9年分の確定申告において、譲渡所得の計算上、「取得費」として父Aの取得価額(1,200万円)にXが支払った本件手数料(82万4000円)を加算した額を計上し、譲渡損失として申告した。
これに対し、課税庁(Y)は、贈与による取得の場合、所得税法60条1項の規定により「贈与者の取得費」を引き継ぐこととされており、受贈者が支払った名義書換手数料は取得費に含まれない(単なる資産取得のための費用であり、譲渡費用の性格も有さない)として、本件手数料の取得費算入を否認する更正処分を行った。
主な争点
贈与により資産を取得した際、受贈者が自ら支出した付随費用(名義書換手数料など)は、譲渡所得の計算上、所得税法60条1項により引き継がれる「贈与者の取得費」に加算して「取得費」として控除できるか否か。
法的三段論法でのまとめ
大前提(法規定および解釈)
所得税法における譲渡所得の計算上、「取得費」とは、資産の取得に要した金額および設備費・改良費の合計額である。法60条1項は、贈与等による資産取得の場合、贈与者の取得費を引き継ぐことを定めているが、これは贈与者の保有期間中の値上がり益に対する課税を確保するためのものである。同条は、受贈者が当該資産を取得するために自ら支出した付随費用を、法38条1項の「資産の取得に要した金額」として取得費に加算することまで否定するものではない。
小前提(事実認定)
Xは父Aから本件ゴルフ会員権の贈与を受けた際、Aの取得費(1,200万円)を引き継ぐ法的地位にある。同時に、Xはこの贈与による取得に伴い、名義書換手数料82万4,000円を現実に支出している。この費用は、Xが本件会員権という資産を取得するために客観的に必要とされた付随費用であると認められる。
結論(当てはめ)
したがって、Xが支払った名義書換手数料は、法38条1項に基づき譲渡所得の計算上控除されるべき「資産の取得に要した金額」に該当する。法60条1項により引き継がれるAの取得費に加え、この手数料を加算した額をXの取得費として計算することは適法である。


