相続税法の同族会社の行為計算否認=シンプル判例まとめ=
大阪地裁平成12年5月12日
目次
事実の概要
被相続人Z(高齢の資産家)は、所有する農地を駐車場へ転用する計画を立てた。Zの死期が迫る中、相続人ら(X1、X2)は同族会社C社を設立し、Zが死亡する直前の平成3年6月14日にC社の役員に就任した。その上で、ZとC社との間で、当該土地について駐車場事業を目的とする「地上権設定契約」(地代:年額3,684万円、存続期間:60年)を締結した。
この契約の結果、C社の駐車場収入に対し、地代の支払いが過大となり、C社は大幅な赤字(営業損失)を計上することとなった。相続人Xらは、相続税申告において、この「地上権」の設定を前提とし、相続税法23条の規定に基づき、自用地価額から地上権割合90%を控除して土地を評価し、課税価格を計算した。これに対し、課税庁(Y)は、この契約は同族会社の行為計算否認規定(相続税法64条1項)に該当するとして否認し、通常の賃貸借(借地権等)の状態を想定した評価額(更地価額の80%相当額)で課税処分を行った。
主な争点
被相続人Zと同族会社C社との間で締結された地上権設定契約(高額な地代と長期間の設定)が相続税法64条1項により否認されるべきか否か。
法的三段論法でのまとめ
大前提(法規定および解釈)
相続税法第64条1項により、同族会社の行為又は計算が、純粋経済人として不自然・不合理であり、かつ、その結果として相続税の負担を「不当に減少させる」と認められる場合、課税庁はその行為を否認し、実態に即して課税価格を計算することができる。
小前提(事実認定)
被相続人Zと同族会社C社は、駐車場事業という簡易な目的のために、収益に見合わない高額な地代と60年という長期間の地上権設定契約を締結した。この契約は、C社に必然的な赤字をもたらすものであり、経済合理性を無視した不自然な取引である。また、この形式的な地上権設定により、土地評価額の90%相当額が控除され、相続税負担が大幅に減少する計算となっている。
結論(当てはめ)
したがって、本件地上権設定契約は、経済的合理性を欠く不当な租税回避行為に該当する。よって、Yによる同契約の否認(および通常の借地権等としての評価・課税)は適法である。

