日本美装事件=シンプル判例まとめ=

東京高裁平成21年2月18日

事実の概要

ビル総合清掃業等を営む同族会社であるXにおいて、経理部長である取締役Aによる横領事件が発覚した。Aは平成11年9月から平成15年9月にかけて、架空の外注費を計上し、その支払金を詐取していた(本件詐取行為)。Xは平成16年にAを懲戒解雇し、損害賠償請求訴訟を提起して勝訴した。課税庁(Y)は税務調査において本件詐取行為を把握し、Xが計上していた架空外注費は損金に算入できないとして、法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分を行った。

これに対しXは、横領による損害の発生は各事業年度に損金に算入されるものである一方、加害者に対する損害賠償請求権の発生はその権利が事実上可能となったときに益金に計上すべき等の主張を行った。

主な争点

従業員等の横領行為によって生じた「損害賠償請求権」の益金計上時期はいつか。具体的には、Xが横領の事実を知らなかった場合でも、行為時に権利が確定したものとして益金に算入すべきか。

法的三段論法でのまとめ

大前提(法規定および解釈)
収益は収入すべき権利が確定した年度の益金とする(権利確定主義)。不法行為に基づく損害賠償請求権は、原則として損害発生時に権利が確定し益金となる(損益同時両建説)。ただし、例外として「通常人(通常の注意力を持つ法人)」を基準に判断し、権利の存在を知ることが客観的に困難であり、権利行使が期待できない状況にある場合は、その限りではない。

小前提(事実認定)
Xでは経理担当取締役Aが架空外注費による横領を行っていた。Aは経理を一任されていたが、Xの代表者が支払決裁の際、請求書等の証憑書類と照合を行っていれば、容易に不正を発覚できる状況であった。したがって、通常人を基準とすれば、Xが損害賠償請求権の存在を把握し、権利を行使することは客観的に不可能ではなかったと認められる。

結論(当てはめ)
よって、XのAに対する損害賠償請求権は、権利行使が期待できない客観的状況にはなく、原則通り不法行為(詐取行為)が発生した各事業年度においてその権利が確定したものとみなされる。したがって、当該損害賠償請求権の額は、各事業年度の益金の額に算入される。