住友不動産事件=シンプル判例まとめ=

東京地裁平成28年5月19日

事実の概要

X(住友不動産)は、平成19年12月、売主A(個人)から東京都内の土地建物(本件不動産)を購入する売買契約を締結した。Xは翌年3月、売買代金約7億6,000万円をAの銀行口座に振り込んだ。その後、課税庁(Y)は、売主Aは所得税法上の「非居住者」に該当し、Xは源泉徴収義務を負っていたとして源泉所得税の納税告知処分を行った。

主な争点

売主Aは「非居住者」に該当するか(生活の本拠の認定)。
支払者(買主)が、取引相手が非居住者であるか否かを確認すべき「注意義務」を尽くしていた場合、源泉徴収義務を免れるか(および本件でXは注意義務を尽くしたといえるか)。

法的三段論法でのまとめ

大前提(法規定および解釈)
所得税法第212条により、国内不動産の対価を非居住者に支払う者は源泉徴収義務を負う。「非居住者」か否かは、住民票等の形式のみならず、資産の所在や家族関係など「客観的な生活の本拠」の実体により判定される。したがって、支払者が源泉徴収漏れの責任を(仮に免責される余地があるとして)回避するためには、単に形式的書類を確認するだけでなく、相手方の出入国状況や生活実態等の客観的事実について具体的に調査・確認する「注意義務」を尽くさなければならない。

小前提(事実認定)
買主Xは、売主Aに対し「国内居住者にあたるか」という法的評価を尋ねたり、住民票を確認したりしたのみであった。Xは、Aの非居住者判定に関する客観的な事情(米国の滞在期間、家族関係、資産状況など)について具体的な質問や確認を行っておらず、本来尽くすべき注意義務を果たしていなかった。

結論(当てはめ)
したがって、Xは非居住者該当性の確認に係る注意義務を尽くしたとは認められず、Aへの支払いに際して源泉徴収を行う義務を免れない。