ワールドファミリー事件=シンプル判例まとめ=
東京地裁平成29年4月11日
目次
事実の概要
原告(X社)は、国外関連者(DWE社)からディズニー・キャラクターを使用した幼児向け英語教材を仕入れ、国内で訪問販売する内国法人である。原告は、当該教材の仕入代金とは別に、国内の別法人に対してキャラクター使用に係るロイヤリティを支払っていた。
課税庁は、Xが国外関連者に支払った教材の購入対価(輸入価格)が独立企業間価格を超えているとして、移転価格税制を適用し、再販売価格基準法に基づいて更正処分等を行った。
課税庁は、独立企業間価格の算定にあたり、同種または類似の棚卸資産(幼児向け教材)を販売する他の事業者との取引を「比較対象取引」として選定し、機能やリスクの差異について必要な調整を行った上で課税価格を算出したとしたが、原告は比較対象取引の選定や差異調整が不当であるとして処分の取り消しを求めた。
主な争点
課税庁が選定した比較対象取引は、本件検証対象取引(Xの取引)と比較可能性を有するか。
特に、「使用する無形資産(ディズニー・キャラクター)」における差異について、課税庁が行った調整(ロイヤリティ割合や販売経費率による調整)によって、比較可能性を確保できたといえるか。
法的三段論法でのまとめ
大前提(法規定および解釈)
再販売価格基準法を用いて独立企業間価格を算定する場合、比較対象取引と検証対象取引の間に「売上総利益率に影響を及ぼす差異」が存在するならば、その差異について必要な調整を行わなければならない。もし、その差異が市場価格や諸経費に複合的な影響を与え、その影響額を適切に把握・調整することが困難である場合には、当該取引は比較対象性を欠き、独立企業間価格の算定基礎として使用することはできない。
小前提(事実認定)
本件において、検証対象取引(Xの取引)では世界的に著名で極めて強い顧客訴求力を持つ「ディズニー・キャラクター」という無形資産が使用されている一方、課税庁が選定した比較対象取引では、そのような強力な無形資産は使用されていないか、その詳細は不明である。 この「無形資産の知名度および顧客訴求力の極めて大きな差異」は、単なるロイヤリティの多寡にとどまらず、販売数量、販売価格、広告宣伝費、販売効率などに広範な影響を及ぼすものである。課税庁はロイヤリティ割合や販売経費率の差をもって調整可能と主張したが、これでは上記のような無形資産がもたらす複合的な経済的価値の差を網羅的に調整したとは認められない。
結論(当てはめ)
したがって、本件比較対象取引と検証対象取引の間には適切な調整を行うことが困難な重要な差異が存在するため、比較対象取引としての適格性を欠く。(よって、これに基づいて行われた本件更正処分等は違法である)。

