オウブンシャホールディング事件=シンプル判例まとめ=
最判平成18年1月24日
目次
事実の概要
X(オウブンシャホールディング)は、保有していたテレビ朝日および文化放送の株式(本件株式)と現金を現物出資し、オランダに100%子会社であるA社(アトランティック社)を設立した。この際、旧法人税法51条1項に基づき課税の繰り延べ(圧縮記帳)が行われた。その後、Xの筆頭株主である公益財団法人Cは、オランダに100%子会社B社(アスカファンド社)を設立した。A社は、B社に対し、新株を著しく有利な価額で発行する第三者割当増資を行った。これにより、A社に対するXの持株割合は100%から6.25%に減少し、逆にB社が93.75%を取得することとなった。この結果、Xが保有していたA社株式に表象されていた含み益の大部分が、対価を得ることなくXからB社へ移転した。課税庁(Y)は、この資産価値の移転を、XによるB社への寄附金と認定し、法人税法22条2項に基づき課税処分を行った。
主な争点
本件のような子会社による著しく有利な発行価額での第三者割当増資(有利発行)に基づき、既存株主(X)から新株引受人(B社)へ資産価値が移転した場合、それが法人税法22条2項にいう「取引」に該当し、課税対象となるか。具体的には、私法上の直接的な取引がない当事者間で、資産価値の移転があった場合に同項が適用されるか否か。
法的三段論法でのまとめ
大前提(法規定および解釈)
法人税法22条2項にいう「取引」には、通常の私法上の取引だけでなく、資産価値(含み益等)を支配する者が、その意図に基づいて、他者との合意(意思の合致)の下に当該資産価値を無償で移転させ、経済的利益を処分・実現した場合も含まれる。
小前提(事実認定)
Xは、子会社A社の唯一の株主として新株発行条件を決定できる立場にあり、意図的にA社に著しく有利な価額で新株を発行させた。これにより、Xが保有するA社株式に表象されていた資産価値(含み益)は、対価なく関連会社B社へ移転した。この移転は、Xの意図とB社の了解(合意)に基づいて行われたものであり、Xが支配する利益を処分したものである。
結論(当てはめ)
したがって、本件におけるXからB社への資産価値の移転は、法人税法22条2項にいう「取引」に該当し、Xに対して当該移転利益として法人税が課税される。

